行政訴訟

Oct. 2, 2010

行政訴訟とは、行政事件に関する訴訟のことである。公権力の行使の適法性などを争い、その取り消し・変更などを求める訴訟等がある。

このうち行政裁判所が裁判するものを「行政訴訟」、司法裁判所が裁判するものを特に「行政事件訴訟」と呼ぶこともある。 現在の日本国憲法下では、すべて司法裁判所によって裁判される。

概要

大陸法系諸国では、裁判所とは別個に行政裁判所が設置されることが多く、明治憲法下の日本でも明治憲法第61条により、「行政裁判所」が設置されていた。現行憲法においてはこれが廃止され、司法機関としての裁判所が一切の法律上の訴訟を裁判すると規定された (裁判所法3条 裁判所の権限)。しかし、行政事件事件については、特別な扱いを認める必要があるとして、行政事件訴訟特例法が制定され,それが廃止されて現行の行政事件訴訟法となった。行政裁判所は廃止されたが、行政事件に別様の扱いを認める制度は存続しているといえる。

最高裁によれば原告勝訴率は約10%(一部勝訴を含む)。

類型

現在の日本の行政訴訟には、その態様により2つの訴訟に大別できる。

  1. 主観訴訟 個人的な権利利益の保護を目的とする訴訟
  2. 客観訴訟 客観的(非個人的)な法秩序の適正維持を目的とする訴訟

主観訴訟

私人の権利保護を目的とする。

抗告訴訟

「抗告訴訟」とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。

取消訴訟

  • 処分の取消しの訴え(3条2項)
  • 裁決の取消しの訴え(3条3項)

無効等確認訴訟

処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無の確認を求める訴訟をいう(3条4項)。現在の法律関係に関する訴えによつて目的を達することができないものに限り、提起することができる(36条前段)。出訴期間の制限はない。

取消訴訟により適時に争うことが出来なかった者に補充的に認められ、処分・裁決の取消を適法に提起できる者が提起できる。

  • 予防的無効確認訴訟(36条前段)
当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者の訴え
  • 補充的無効確認訴訟(36条後段)
処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者の訴え

不作為の違法確認訴訟

処分又は裁決をすべきであるにもかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟をいう(3条5項)。処分又は裁決についての申請をした者に限り、提起することができる(37条)。出訴期間の制限はない。

義務付け訴訟

申請又は審査請求に対し相当の期間内に何らかの処分又は裁決がされないか、処分又は裁決がされた場合において、取り消されるべきもの、又は無効もしくは不存在であるときに提起できる(37条の3第1項)。

  • 直接型(非申請型)義務付け訴訟
行政庁が一定の処分をするべきであるにもかかわらず、これがされないときの訴訟(3条6項1号)。
重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるために他に適当な方法がないときに限り、提起することができる(37条の2第1項)。
行政庁が一定の処分をすべき旨を命ずることを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り、提起することができる(37条の2第3項)。
行政庁がその処分をすべきであることがその処分の根拠となる法令の規定から明らかであると認められ、又は行政庁がその処分をしないことがその裁量権の範囲を超え、もしくはその濫用となる、と認められるときは、裁判所は、行政庁がその処分をすべき旨を命ずる判決をする(37条の2第5項)。
  • 例:原子力発電所の施設改善命令を出すように求める訴訟
  • 申請満足型義務付け訴訟
一定の処分、又は裁決を求める旨の法令に基づく申請、又は審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分、又は裁決をすべきであるにもかかわらず、これがされないとき、裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟をいう(3条6項2号)。
申請又は審査請求をした者に限り、提起することができる(37条の3第2項)。
行政不作為型
当該法令に基づく申請、又は審査請求に対し、相当の期間内に何らかの処分、又は裁決がされないとき(37条の3第1項1号)。
処分又は裁決に係る不作為の違法確認の訴えを併合して提起しなければならない(同条3項1号)。
拒否処分型
申請又は審査請求を却下し又は棄却する旨の処分又は裁決がされた場合において、当該処分又は裁決が取り消されるべきものであり、又は無効若しくは不存在であるとき(同条1項2号)。
処分又は裁決に係る取消訴訟又は無効等確認の訴えを併合して提起しなければならない(同条3項2号)。
仮の義務付け
義務付けの訴えがあった場合において、その義務付けの訴えに係る処分がされないことにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は申立てにより決定をもって仮に行政庁がその処分又は裁決をすべき旨の命令(37条の5第1項)。
公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは命ずることができない(37条の5第3項)。
内閣総理大臣の異議(27条)が適用される。

差止め訴訟

行政庁が処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟をいう(3条7項)。重大な損害を生ずるおそれがある場合で、他に適当な方法がないときに提起することができる(37条の4第1項)。一定の処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り、提起することができる。(37条の4第3項)

仮の差止め
差止めの訴えの提起があつた場合において、その差止めの訴えに係る処分又は裁決がされることにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、仮に行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることができる(第37条の5第2項)。
出訴期間の制限はない(38条1項)。
内閣総理大臣の異議(27条)が適用される
  • 例:営業停止命令が行われ、重大な損害が予想される場合の処分の差止め請求。

法定外抗告訴訟

当事者訴訟

当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの、公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟をいう(4条)。

法令に出訴期間の定めがある当事者訴訟は、その法令に別段の定めがある場合を除き、正当な理由があるときは、その期間を経過した後であつても、これを提起することができる(40条)、この規定は実質的当事者訴訟には、法令で出訴期間を定めたものはないので形式的当事者訴訟のに関するものである。

抗告訴訟に関する規定の準用(41条)

我が国において、国家賠償訴訟は民事訴訟として取扱い、行政事件訴訟法の適用を受けないという先例が確立している。

行政庁の権限の行使を訴訟物としないので民事訴訟に近く、ほとんどが民事訴訟の規定により審理される。

  • 実質的当事者訴訟
公法上の法律関係に関する訴訟
公務員の地位確認訴訟
憲法29条に基づく損失補填の請求訴訟
租税の過誤納の返還請求
損失補償(消防法29条3項、水防法28条2項)
日本国籍の確認の訴え
公法上の契約に関する訴訟
  • 形式的当事者訴訟
当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの
損失補償の訴え(土地収用法133条3項)提起した者に応じて土地所有者又は、起業者が被告となる。
特許無効審判・延長登録無効審判に対する訴訟(特許法179条但書)

客観訴訟

客観的な法秩序の維持を目的とする。

民衆訴訟

国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するものをいう(5条)。
法律に定める者に限り、提起することができる(42条)。
住民訴訟(地方自治法242条の2)
当選訴訟(公職選挙法203条)

機関訴訟

国又は公共団体の機関相互間における権限の存否又はその行使に関する紛争についての訴訟をいう(6条)。
法律に定める者に限り、提起することができる(42条)。
代執行訴訟(地方自治法245条の8 5項)
首長と議会との紛争の裁定の訴訟(地方自治法176条)
国の関与に関する訴え(地方自治法251条の5)
都道府県の関与に関する訴え(地方自治法252条)

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民事訴訟法

Nov. 27, 2009

民事訴訟法(みんじそしょうほう)

  1. 日本の法律のひとつ。本項で詳述。
  2. 民事訴訟に関する手続を定めた各国・地域政府の法令や裁判所の規則を総称していう。「民事訴訟法」と名の付く法令を有する国もあるし(日本、イギリスなど)、「民事訴訟法」以外の名の付く法令を有する国もある。後者の例として、アメリカ合衆国では連邦民事訴訟規則(Federal Rules of Civil Procedure)という裁判所規則が連邦裁判所における民事訴訟に関する手続を定めた一般法であり、各州の裁判所における民事訴訟に関する手続を定めた法令の手本ともなっている。欧州連合(EU)におけるブラッセル条約(das Gerichtsstands- und Vollstreckungsübereinkommen der Europäischen Gemeinschaft (EuGVÜ) およびルガノ条約(Lugano-Übereinkommen)は国際裁判籍や執行に関する条約である。

民事訴訟法(みんじそしょうほう)とは、民事訴訟に関する手続の原則を定めた日本の法律(平成8年法律第109号)である(同法1条)。これを形式的意義における民事訴訟法、または民事訴訟法典ともいう。一方、民事訴訟に関する手続を定めた法令や確立した判例その他の規範全体を総称して実質的意義における民事訴訟法という。

民事訴訟法(明治23年法)について

日本で初めて本格的な民事訴訟法が制定されたのは、1890年(明治23年)のことである(旧々民事訴訟法、明治23年法律第29号)。ドイツの法学者ヘルマン・テッヒョーに起草にかかるものである。

この法律は、1926年(大正15年)に、オーストリア民事訴訟法典の影響を受けた大きな改正(大正15年法律第61号)を経て、その後ほぼ70年の間、部分的な改正のみが行われ、用いられ続けた(旧民事訴訟法)。

その後、民事訴訟法(平成8年法律第109号)が施行されたことに伴い、旧民事訴訟法は「公示催告手続及ビ仲裁手続ニ関スル法律」と題名を変えて残っていたが、仲裁法(平成15年法律第138号)が制定されたことに伴い、公示催告手続のみを規定する「公示催告手続ニ関スル法律」という名称の法律になった。さらに、公示催告手続につき改良した手続を非訟事件手続法(明治31年法律14号)に加える旨の改正がされるに及んで、最終的に明治23年法律29号は廃止されることとなった。

制定当初から大正の大改正までの旧民事訴訟法を旧々民事訴訟法と呼ぶことがある。旧々民事訴訟法の法制をめぐる研究は、ほとんどなくなってきている。たとえば、現行民事訴訟法第5条1号の財産権をめぐる特別裁判籍は旧民事訴訟法5条の義務履行地の特別裁判籍をそのまま引き継いだものであるが、旧々民事訴訟法第18条の契約の成立にかかる特別裁判籍を拡張し、契約の成立が立証できなくとも適用されるようになった経緯の論文は少ない。また、現行民事訴訟法第249条2項の弁論の更新は旧民事訴訟法で創設されたものであるが、旧々民事訴訟法の母法であるドイツでは裁判官の転勤がないため、不都合を生じた解決のためだったということがあげられる。

民事訴訟手続で採られる原則

民事訴訟においては、訴訟係属中の審理の進行については裁判所が主導権を有する職権進行主義が採用されているが、訴訟の内容面については主導権を当事者に与える当事者主義が採用されている。そして、当事者主義の内容として処分権主義、弁論主義といった原則が採用されている。

処分権主義

訴訟手続の開始、審判範囲の特定、訴訟手続の終了については、当事者の自律的な判断に委ねられるという原則のことである。民事訴訟の対象となる私人間の権利関係については私的自治の原則が認められるため、この原則を民事訴訟手続にも反映したものといえる。

訴訟手続の開始
私人間に権利関係をめぐる紛争があっても、裁判所としては、当事者から紛争を解決したい旨の申立て(訴え)がなければ訴訟手続を開始することはしない。一見当たり前のようであるが、訴訟以外の裁判所の手続中には、申立てがなくても職権で手続を開始するものもある(例えば、民事再生手続で再生計画案が認可されなかった場合の職権による破産手続開始決定など)。
審理範囲の特定
裁判所は、当事者(具体的には原告)によって特定された権利関係についてのみ判断をする。例えば、500万円を支払えという趣旨の訴訟が係属したとして、裁判所は審理の結果600万円請求する権利が認められるという心証を得たとしても、超過する100万円分については訴えの対象になっていないため、500万円を支払えという内容の裁判しかできない。
訴訟手続の終了
いったん訴訟が係属した場合といえども、当事者は開始された訴訟手続をその意思により終了させることができる。具体的には、原告が訴えを取り下げた場合(ただし、被告が本案について答弁をした場合は被告の同意が必要)、訴訟上の和解が成立した場合、請求の放棄・認諾があった場合には、判決をせずに訴訟手続が終了する。

弁論主義

職権探知主義の対義語。通説によると、資料(事実と証拠)の収集・提出を当事者の権限および責任とする建前のこととされ、具体的には以下の三つの内容に分けて考えられる。なお、弁論主義の適用される事実は主要事実に限られ、間接事実や補助事実には適用されないというのが通説である点に注意を有する。

民事訴訟において弁論主義が採用される根拠としては、私的自治の訴訟上の反映とする説(本質説ないし私的自治説)が通説である。これを前提に、近年は、当事者が訴訟資料を限定できる権能とそれによる責任こそが弁論主義の本質であり、当事者が訴訟資料を提出できる権能(攻撃防御方法提出権、弁論権)とそれによる責任は職権探知主義にも妥当するものであって両者は区別すべきだとする議論が有力化しつつある。

第1テーゼ(当事者が主張しない事実の扱い)
その事実を当事者が主張しなければ、判断の基礎とすることはできない。例えば、貸金返還請求訴訟において、被告が既に弁済していることが証拠上認められる場合であっても、当事者が弁済の事実を主張していない限り(例えば、そもそも消費貸借契約自体が不成立という争い方しかしていない場合など)、弁済の事実があったことを前提に判断をすることはできない。
第2テーゼ(当事者間に争いのない事実の扱い)
その事実について、当事者間に争いがない事実はそのまま判断の基礎としなければならない。例えば、貸金返還請求訴訟において、被告が既に弁済していることが証拠上認められる場合であっても、被告自身が未だ弁済していないという自己に不利益な事実を認めている場合は、弁済をしていないことを前提に判断しなければならない。
しかしこの場合も、通説ではそのまま判断の基礎とされる当事者間に争いがない事実とは主要事実であるとされているため、間接事実にかかわる証拠や自白において、たとえ当事者間に争いがなかったとしても、必ずしもそれがそのまま判断の基礎とされるわけではない。
第3テーゼ(職権証拠調べの禁止)
事実認定の基礎となる証拠は、当事者が申し出たものに限定される。例えば、貸金返還請求訴訟において、被告が既に弁済したか否か証拠上はっきりしない場合で、裁判所としては別の証拠があれば事実認定できると考えた場合でも、当事者が申出をしない限りその別の証拠を調べることはできない。
なお、大正旧民事訴訟法第261条では職権による証拠調べがあったが、第2次大戦後に刑事訴訟法全面改正時に削除された経緯がある。

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